本日の営業時間
10:00-17:00

暮らしのこと

有機農業とは?|有機農業の特徴や他の農業との違い、日本の有機農業の現状をご紹介します。

2023/09/27

有機農業とは?|有機農業の特徴や他の農業との違い、日本の有機農業の現状をご紹介します。

こんにちは!札幌円山のオーガニックショップ「らる畑」のブログを担当しております松原です。

有機農業と聞いて、「安心な野菜のイメージはあるけど、意味はよく知らない」「他の農業と何が違うのか分からない」という方もいらっしゃるかと思います。

今回は、有機農業とはどのような農業なのか、有機農業と他の農業との違いや、日本における有機農業の現状、有機農業のメリットと課題などをご紹介します。

有機農業について知ることで、食材選びや食事の楽しみが広がるかもしれません。

有機農業とは?

有機農業とは、「有機農業の推進に関する法律」に基づき次のように定義されています。

  • 化学的に合成された肥料及び農薬を使用しない
  • 遺伝子組換え技術を利用しない
  • 農業生産に由来する環境への負荷をできる限り低減する

国際的な定義で考えると、食品と健康に関する国際的な機関であるコーデックス委員会は次のように表現しています。

「有機農業は、生物の多様性、生物的循環及び土壌の生物活性等、農業生態系の健全性を促進し強化する全体的な生産管理システムである」

有機農産物の定義

有機JAS規格による厳しい基準があり、その基準を満たす条件が有機農産物の定義となります。主な基準として、次のような条件を満たさなければなりません。

  • 周辺から使用禁止資材が飛来し又は流入しないように必要な措置を講じている
  • は種又は植付け前2年以上化学肥料や化学合成農薬を使用しない
  • 組換えDNA技術の利用や放射線照射を行わない

有機農業の目的

有機農業の目的として、「安心して食べれる農産物を作ること」「周りの土壌環境や生態系を守り、多様な生き物と共生すること」があります。

そしてその先に、有機農業の自然循環機能が維持・増進されることにより、持続的な発展につなげていくというビジョンがあります。

有機農業と自然農法の違い

有機農業と自然農法では、農薬や肥料の有無による違いがあります。

有機農業では、天然物由来の成分を持つ肥料や農薬を使用し、有機JAS規格で認可されてい ない、化学合成された肥料や農薬は使用しません。

それに対して自然農法は、一切の農薬と化学肥料を使わないという特徴があります。

もともと「自然農法」という言葉は、著作「わら一本の革命」で有名な福岡正信さんという方が提唱した言葉です。

福岡正信さんは、地元の愛媛県で「不耕起 無肥料 無除草」の信念をもとに、引き算の農法を体現しました。

つまり、自然農法は「自然の力そのまま」を極めている農業の方法かもしれません。

ただ、農作物を販売する農家にとっては、実現することが難しい農法でもある側面もあります。

有機農業と無機農法の違い

有機農業と無機農法では、主に使う肥料の違いがあります。

有機農業は、有機質の肥料を使用した農業です。堆肥をはじめ、油粕、魚粉、米ぬか、鶏糞などがあります。

有機質肥料とは、単なる肥料ではなく、土壌を改善する効果もあります。

それに対して無機農法は、無機質肥料を使用しています。無機質肥料には、硫安、硝酸アンモニウム、過リン酸石灰、塩化カリウムなどの化学肥が挙げられます。そういった無機質肥料を使用することによって、農作物の生育や収穫量を安定させることができます。

ただし、継続した無機質肥料の使用により土壌の排水性や通気性が悪くなるデメリットにも気をつけなければいけません。

日本国内における有機農業の取り組み

みどりの食料システム戦略

持続可能な食料システムの取り組みとして、令和3年に農林水産省が「みどりの食料システム戦略」を策定しました。

中長期的な観点から、調達、生産、加工 流通、消費の各段階の取組とカーボンニュートラル等の環境負荷軽減のイノベーションを推進するための戦略です。

「みどりの食料システム戦略」における目標の中には、次のようなものがあります。

  • 2040年までに、次世代の有機農業技術を確立する
  • 2050年までに有機農業の取組面積の割合を25%(100万ha)に拡大する 
  • 2050年までに低リスク農薬への転換、総合的な病害虫管理体系の確立・普及を行い、化学農薬の使用量を50%減らす

※ここで使うha(ヘクタール)という単位は、「100メートル×100メートル」の広さにあたります。

この目標を見ると分かるように、地球規模でSDGsに取り組む世の中では、農業は「有機農業」に向かうべきであるという考えが重視されているのです。

日本における有機農業への取り組みの状況

2010年から2020年までの10年間で、有機農業の耕地面積は次のように広がっています。

  • 有機農業の取組面積:16,700ha→25,200ha(51%増加)
  • 有機JAS取得農地面積:9,400ha→14,100ha(50%増加)

また、有機農業の取組面積が全体の耕地面積に占める割合は、0.4%から0.6%に増加しています。

現在の有機農業に取り組む有機JASほ場のうち、全体の41%が北海道、7%が鹿児島、5%が熊本にあります。

そして、2017年から2020年にかけて、有機JAS取得の農地面積の伸びが大きい都道府県を地目別で見ると次のようになっています。

田:①福井県(34ha)②宮城県(31ha)

普通畑:①北海道(155ha)②群馬県(35ha)

牧草畑:①北海道(638ha)②千葉県(21ha)

茶畑:①鹿児島県(20ha)②京都府(20ha)

少しずつ、確実に有機農業を行う農地が広がっていることが分かりますね。

また、2021年度に行われた意識・意向調査によると、生産者が有機農業に取り組む理由として「よりよい農産物を提供したい」という意見が約7割を占めていました。

消費者が「いい農産物を食べたい」と思うのと同じように、生産者の方々も「いい農産物を食べてほしい」という思いを持っているのですね。

有機農業のメリット

有機農業や、有機農業で育てた野菜には次のようなメリットがあります。

安心して食べられる

有機農業は、できる限り自然の力で農作物を育てます。

化学合成された農薬は使用せず、必要な場合に天然物由来の成分の農薬を使用します。

環境に配慮できる

化学肥料や化学合成農薬を使用すると、土壌、地下水、河川、大気にまで農薬の成分が広がる可能性があります。

そして、その土地の生態系をはじめ、わたしたちの生活にも影響を及ぼしかねません。

有機農業は、周りの自然環境や生態系へ配慮した農業の方法であると言えるのです。

農作物本来の味を出せる

世の中には、味のクセを無くすために、遺伝子組み換えがされている野菜などが広く流通しています。

また、普通の農作物と比べて、有機農業で育てられた農作物は抗酸化物質を多く含んでいます。そのため、有機農業の農作物は本来の風味を楽しむことができるのです。

有機農業の課題

野菜の本来の味ををおいしく食べることができ、環境にも優しい有機農業ですが、今後の取り組みに向けて次のような課題があります。

販売価格が高くなる

有機農業は、効率的な農薬を使用しないことで管理に手間がかかったり、生産コストが高くなってしまいます。

そのため、販売価格も高く設定されるため、慣行農法で多く生産される農産物と比べて、消費者に馴染みにくくなってしまっている課題があります。

収穫量が安定しない

農薬の使用を抑えることで、病害虫の発生に対応できない場合があり収穫量が安定しない年もあります。

収穫量が安定しないことで、流通も広がりにくくなってしまう点も課題のひとつです。

虫や雑草の管理に手間がかかる

多くの場合、有機農業では、自分の手で虫や雑草の防除をしなければならず、管理に多くの時間と手間がかかってしまいます。

有機JAS認証の規定が厳しい

野菜の表示に「有機」や「オーガニック」と記載するためには、農林水産省が定める有機JAS規格の基準を満たし、認証を受けなければいけません。

有機JAS認証を得るためには、使用する資材の種類や、栽培する農地の状態など。厳しい基準を満たす必要があるのです。

一方で、厳しい基準の有機JAS認証を得ることで、農作物を販売するときに「有機」や「オーガニック」といった表示をすることができるようになります。

これは、消費者であるみなさんが安心して野菜などを選ぶためのポイントになるのです。

まとめ

今回は、有機農業とはどのような農業なのかをご紹介しました。

「持続可能な発展」が重視される世の中で、有機農業は政府主導でも強く進められる農業になっています。

野菜本来の風味を感じることで、「食べる」ことへの喜びや楽しみを得ることができるのが有機野菜のなによりの魅力です。

効率性や合理性を求められる生活の中で、ゆっくりと時間を過ごすために有機野菜を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。

今回の参考:

有機農業をめぐる事情』(令和4年7月 農林水産省)