みなさんにも買っておいた食材を使いきれずに美味しい時に食べきれなかったり、賞味期限が切れてしまったため、捨ててしまったりする経験が少なからずあると思います。
私たちの消費行動が大きく影響する「食品ロス」。
もったいないだけではなく、地球環境にも影響を及ぼす問題として考えてみませんか。
今回は、食品ロスとは何か?実際に食品ロスが発生している量や、食品ロスが与える影響、日本や海外での食品ロス削減に向けた取り組みなどについて調べた内容を記事にしました。
食品ロス(フードロス)とは?
食品ロスとは、本来食べることができるのに捨てられてしまう食品のことを言います。
食べ物を捨てることは、環境や社会に悪い影響を与えてしまう側面もあります。
廃棄された食品を焼却処理する時に排出されるCO2が、地球温暖化を進行させる大きな要因のひとつになるのです。
また、世界には貧困によって十分に食べ物が得られない人がたくさんいる中で、食料資源が一部の先進国に偏り、活用されないまま廃棄されているという問題が起きています。
現在、国連のSDGsの目標12では「つくる責任 つかう責任」が示されています。食品ロスは世界的な課題として大いに注目を集めています。
食品ロスは大きく分けると2つに分けることができ、飲食店など事業活動を伴って発生する食品ロスを「事業系食品ロス」と呼び、家庭から発生する食品ロスを「家庭系食品ロス」と呼びます。
食品ロスが生まれる原因
食品ロスが生まれる原因には、いくつかの原因があります。
まず、食品の「消費期限」や「賞味期限」への誤った認識によって、本来食べることができたはずの食べ物が捨てられてしまう点があります。いわゆる家庭系食品ロスです。
そもそも、賞味期限や消費期限は「食品表示法」に基づく「食品表示基準」で定義されています。賞味期限は「おいしく食べられる」期限、消費期限は「安全に食べられる」期限と考えることができます。
引用:東京都保健医療局
よくあるのが「賞味期限が切れる=安全ではない」という認識で、まだ食べられるのにロスしてしまうこと。これが家庭系食品ロスが増えてしまう原因のひとつになっています。
一方で、食品メーカーや飲食店が廃棄する事業系食品ロスの問題もあります。
過剰生産・過剰調理・売れ残り・食べ残しなどが山積し、食品ロス全体のなかで非常に大きな割合を占めています。
食品メーカーの賞味期限・消費期限の決め方
消費者庁は「消費期限又は賞味期限については、食品の特性等を十分に考慮した上で、客観的な試験・検査を行い、科学的・合理的に設定すること」と定めているため、食品メーカーは、政府の定めたガイドラインに準じながら、様々な試験を行って賞味期限・消費期限を決定しています。
食品ロスはどれくらい生まれているのか
実際に、日本や世界でどれほどの食品ロスが生まれているのか見ていきましょう。
日本から見る食品ロスの量
令和3年度の食品ロス量は523万トンであり、このうち食品関連事業者から発生する事業系食品ロス量は279万トン、家庭から発生する家庭系食品ロス量は244万トンです。
日本人の1人当たりの食品ロス量は1年で約42kgとなり、これは日本人1人当たりが毎日お茶碗一杯分のご飯を捨てているのと近い量になると考えられます。
日本幸福経済社会研究所は次のように論じています。
日本の特別な問題は、食料自給率がわずか38%(カロリーベース)であることです。つまり、日本は膨大な量の食料を輸入していると同時に、膨大な食料廃棄・ロスを発生させているのです。……(中略)山積みの食品ロスや廃棄物自体ももちろん問題ですが、ある国が他国から食品を輸入しながら大量の廃棄物を排出していることも大きな問題です。
(日本幸福経済社会研究所「ニュースレター #53: 日本における食品ロスと廃棄: 問題点と取り組み」)
世界から見る食品ロスの量
FAO(国際連合食糧農業機関)の報告書によると、世界では年間約13億トンもの食品ロスが発生しています。これは、世界で生産されている約40億トンの食料の約3分の1に相当する量に当たります。
食品ロスを減らすことの重要性
食品ロスを減らすことで、地球温暖化の抑制につなげることができる可能性があります。
また、地球規模で食品ロスを減らすことは、地球や国の中の偏った食料バランスを見直し、食べ物が足りていない人たちへ食料を行き届かせることにもつながるかもしれません。
SDGsの重要性が増す世の中で、地球の持続的な発展のためには、食品ロスは解決しなければいけない課題と言えます。
また、家庭で食品ロス削減に取り組むことで、子どもたちに、食べることの大切さを知ってもらうきっかけにもなるでしょう。
日本で行われている食品ロス削減への対策
日本では、事業系食品ロスを、2030年度までに2000年度の量から半減するという目標を立てています。国や団体、企業によって実際に行われている取り組みには次のような活動があります。
フードバンクの促進
フードバンクとは、問題なく食べることができるのに、包装の破損や印字ミス、過剰な在庫などの理由で流通されない食品を企業などから寄贈してもらい、食品を必要とする施設や団体、困窮世帯に無償で提供する活動のことを言います。
らる畑がある札幌市でもフードバンクの取り組みが行われています。
フードバンクは非営利組織などの団体によって行われ、地域単位で食品ロスを削減し、地域の施設や福祉団体に必要な食品を行き渡らせる大きな役割を持っているのです。
「てまえどり」の啓発
食品ロス削減に向け、小売店が消費者に対し、商品棚の手前にある商品を選ぶ「てまえどり」を呼びかける取り組みがあります。
この取り組みは、消費者庁主導のもと、農林水産省や環境省、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会と連携し、2021年6月から行われています。
具体的には、コンビニなどの小売店舗は共通の「てまえどり」のポップを啓発資材として商品棚に提示して消費者に呼びかけ、知ってもらうという内容です。
TABETEアプリ
食品ロス削減のための企業による取り組みとして、「TABETE」という飲食店の廃棄予定食品と消費者をつなぐマッチングアプリがあります。
このアプリは、株式会社コークッキングによって運営されていて、ユーザーは登録時に「レスキュー隊員」となり、その購入活動は「レスキュー」と称される、ユニークさのあるサービスです。
世界各国で行われている食品ロス削減への対策
世界各国では、独自の方法で食品ロス削減に向けた取り組みが行われているようです。
アメリカ
アメリカで行われている食品ロス削減の取り組みとして、「シェアテーブル」があります。
アメリカの学校では、全ての生徒に対して給食を提供することが義務化されていますが、生徒が苦手な食べ物を残すことで食品ロスが多く生まれてしまう問題があります。
アメリカ政府はこの問題に対する対策として、あらかじめ自分が食べない食品をシェアテーブルに戻し、他の生徒がその食品を自由に食べられる仕組みを作りました。
イギリス
イギリスでは、「OLIO」という食品ロス対策アプリによる独特な取り組みがあります。
このアプリは、食品の廃棄を考えている人が、その食品を撮影し、食品に関する簡単な説明を添えて写真を投稿することで、その食品がほしい人がメッセージを送って食べ物を受け取るという画期的なシステムです。
オーストラリア
オーストラリアでは、独自の取り組みとして「Use It Up」テープというものがあります。
このテープは、オーストラリア国内最大のフードバンクである「OzHarvest」が発明したものです。
「Use It Up」の他に、「Eat me up」「Pick me」「Cookme」など様々なメッセージが書かれていて、これらのテープを食品に貼ることで、消費する優先順位がはっきりわかるようになるテープなのです。
フランス
フランスでは、「食品ロス反対ラベル」の取り組みが進められています。この取り組みは、エコロジー移行省が中心となって進められているものです。
飲食店がこの食品ロス反対ラベルの申請を行い、認証期間がその飲食店の食品ロス対策度を審査します。食品ロスへの対応ができているレベルを3段階で評価し、その結果をラベルにして飲食店へ付与するという内容です。
認証を受けた飲食店では、店頭やメニュー、ウェブサイトにてその食品ロス反対ラベルを表記することができるようになります。
ドイツ
ドイツでは、食の大切さを子供たちに伝えるプログラムが実施されていて、ドイツのフードバンク「Berliner Tafel e.V.」は、使用されなくなった電車やバスに子どもたちを招いて、調理実習を行う活動をしています。
冬にはキッチン付きのトラックで学校や幼稚園を訪問しているみたいです。
また、人工知能を食品ロス対策に活用する取り組みもあり、過剰生産を抑えて食品ロスを避けるために、生産と消費のデータから最適な生産計画を立てるなど、最新技術の導入も図られています。
わたしたち個人が食品ロスを減らすためにできること
国や団体で取り組むだけでなく、わたしたち個人でも食品ロスを減らすために取り組むことができます。
1.食べきれる量を把握すること
2.食べ残しを減らす意識をもつ
3.食品は必要な分をマメに買う
4.すぐ食べるものは手前の品物から買う
5.皮や葉なども捨てずに野菜全体を使う
6.賞味期限が切れた食材も匂いや味などで食べられるか判断する感覚をやしなう。
お庭などがあるお家であれば、コンポストを使って生ごみを堆肥に変えるのも素敵な取り組みですね。
らる畑では、必要な量を新鮮な内に買っていただけるよう人参や生姜、果物など量り売りでお買い求めいただけます。
まずは身の回りから「食品ロス」を減らす取り組みをはじめてみませんか。
今回の記事をきっかけに、食の安全性や添加物に対して関心を持っていただけたら幸いです。
<参考>
●『食品ロスとは』(農林水産省)
●『食品ロスの現状を知る』(農林水産省)
●『食品ロスって何?』(消費者庁)
●『諸外国における食品ロス削減に関する先進的な取組についての調査業務』(株式会社シード・プランニング/令和 3 年度消費者庁請負調査)
●『フードシェアリングアプリTABETE|作り手の「食べて」の想いを、最後の一食まで「食べ手」に繋ぐ食品ロス削減事業』(Spaceship Earth)