こんにちは!札幌円山のオーガニックショップ「らる畑」のブログを担当しております松原です。
これまで「遺伝子組み換えでない」と表示されていたトウモロコシ、大豆、じゃが芋製品などが「分別生産流通管理済み」という聞きなれない表示に変わっているのをご存じですか?慣れ親しんだ「遺伝子組み換えでない」という表示がなくなって混乱している方もいらっしゃるのではないでしょうか。
理由は2023年4月から改定された任意表示制度。今後は「遺伝子組み換えでない」の表示は「遺伝子組み換えの混入がゼロ」という厳格な基準を満たさなければ表示違反になります。
そこで今回は、みなさんの食べ物選びに大きな影響を及ぼす新表示「分別生産流通管理済み」について深堀していきます。今後は何を頼りに食べ物を選べばいいの?と不安に感じている方は、ぜひご一読ください。
分別生産流通管理済みとは「遺伝子組み換え物と分けて管理している」という意味
たとえば納豆や豆乳の商品パッケージをみてみると「分別生産流通管理済み」という表示を見かけることがあります。これは、「生産・流通・製造・加工の段階で、遺伝子組換え食品が混入しないように分けて管理しています」という意味です。
名称 | 納豆 |
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原材料名 | 【納豆】丸大豆(アメリカ又はカナダ)(分別生産流通管理済み)、米粉、納豆菌、(一部に大豆を含む)【たれ】たんぱく加水分解物、砂糖、しょうゆ、食塩、鰹節エキス/調味料(アミノ酸等)、アルコール、(一部に小麦・大豆を含む) |
内容量 | 納豆(45g×3)たれ(5.1g×3) |
賞味期限 | 天面に記載 |
保存方法 | 直射日光を避け常温で保存 |
製造者 | ●●株式会社北海道札幌市△△区3-15 |
これだけを聞くと「遺伝子組み換えでない」という表示と何が違うのだろうという疑問が浮かびますよね。
「遺伝子組み換えでない」との違いは?
まず結論をいうと、「遺伝子組み換えでない」と「分別生産流通管理済み」は、言葉は違いますが本質的には同じ意味です。
これまでは「遺伝子組み換えでない」と表示されていましたが、2023年4月以降「分別生産流通管理済み」という表示に変わりました。
従来は、「意図せぬ混入が5%以下」であるなら、「遺伝子組み換えでない」が許可されていたのですが、2023年4月に遺伝子組換え表示制度が改正されたため、「混入がゼロ」(遺伝子組み換えが不検出である)ことが大前提となりました。
つまり今後「遺伝子組み換えでない」と表示するためには、「混入がゼロ」であることを厳格に証明しなければならなくなったのです。
そうなってくると、「遺伝子組み換えでない」と表示していたものを、「遺伝子組み換えでない」と表示するのが難しくなります。混入ゼロと断言するには、相当なリスクが伴うからです。
これまで | 遺伝子組み換え食品の意図せぬ混入率が5%以下なら「遺伝子組み換えでない」と表示できる |
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これから | ①遺伝子組み換え食品の意図せぬ混入率が0%なら「遺伝子組み換えでない」と表示できる ②遺伝子組み換え食品の意図せぬ混入率が5%以下なら「分別生産流通管理済み」と表示できる |
結論 | 従来の「遺伝子組み換えでない」に相当する表示が「分別生産流通管理済み」となった。 |
「“遺伝子組み換えでない”と表示するためのハードルが上がった」と整理すればわかりやすいかもしれません。
消費者庁食品表示企画課は、「遺伝子組み換えでない」と表示するには、次のような条件を満たす必要があると示しています。
遺伝子組み換え農産物の混入がないことの確認方法としては、第三者分析機関等による分析や、以下を証明する書類等を備えておくことなどが考えられます。
①生産地で遺伝子組み換えの混入がないことを確認した農産物を専用コンテナ等に詰めて輸送し、製造者の下で初めて開封していること
②国産品又は遺伝子組み換え農産物の非商業栽培国で栽培されたものであり、生産、流通過程で、遺伝子組み換え農産物の栽培国からの輸入品と混ざらないことを確認していること
③生産、流通過程で、各事業者において遺伝子組み換え農産物が含まれていないことが証明されており、その旨が記載された分別生産流通管理証明書を用いて取引を行っている場合
なお、行政の行う科学的検証及び社会的検証の結果において、原材料に遺伝子組み換え農産物が含まれていることが確認された場合には、不適正な表示となります。
『知っていますか?遺伝子組換え表示制度』(消費者庁食品表示企画課)
分別生産流通管理済みの安全性
本質的には、旧来の「遺伝子組み換えでない」と同じ意味ですので、「分別生産流通管理済み」に表示が変わったからといって、急激に食の安全リスクが脅かされるということはないと思います。今後も、食品安全委員会を筆頭に、審査は行われていくものと思われます。
なぜ表示が「分別生産流通管理済み」になった?
政府の見解によれば、「遺伝子組み換えでない」という表現がひとり歩きすると、「遺伝子組み換えでないものが健康によくて、遺伝子組み換えの食べ物は健康に悪い」というイメージが根付いてしまうことを懸念しているようです。
これを「優良誤認」といいます。政府としては、遺伝子組み換えの食品であっても、厳格に検査をしているので、双方に優劣がついてしまうことは避けたいと考えているのでしょう。今回「分別生産流通管理済み」の表示に切り替える理由として、「消費者選択の機会を拡大する」ということが挙げられています。
分別生産流通管理済み表示の影響
これまで「遺伝子組み換えでない」という表示を頼りに食べ物を選んできた消費者からすれば、ちょっと困った話です。ある日を境に「遺伝子組み換えでない」に比べると「分別生産流通管理済み」という表示は伝わりづらく混乱が生じます。
またその他にも、物流や製造ラインの都合上、意図しない微量の混入がないとは言い切れないためメーカーは違反を恐れて表示を変えざるを得ません。「分別生産流通管理済み」の意味をよく理解してないと、「遺伝子組み換えでない」ということで信用してくれたお客様が、離れていってしまうリスクもあります。情報発信と啓発が、これからの課題です。
遺伝子組み換え不分別とは?
ちなみに「遺伝子組み換え不分別」は、分別生産流通管理済みの反対の表現です。つまり、「生産・流通・製造・加工の段階で、遺伝子組換え食品が混入しないように分けて管理していません」という意味です。
今回の参考
- 『知っていますか?遺伝子組換え表示制度』(消費者庁食品表示企画課)
- 『新たな遺伝子組換え表示制度について』(消費者庁食品表示企画課)
- 『遺伝子組み換え食品の表示 4月の改正で何が変わった?』(NHK 解説委員室)
- 『遺伝子組換え食品について』(地方独立行政法人 大阪健康安全基盤研究所)