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中国の有機農業はどのように発展したのか?独自の有機認証や国内への影響をご紹介します。

2023/12/26

現在、環境保全型農業や持続可能な農業のロールモデルとして世界で注目の高まる有機農業。

その発展には国を挙げての様々な支援が関係しています。

この記事では、「中国の有機農業」について調べた内容を記事にしました。

世界各国の有機農業への取り組みを比較することで、オーガニックが少しづつ拡がって来た背景が見えてくるかもしれません。

中国の有機農業の発展

中国は1949年の建国から、国家主導で食料増産を目指し農業の近代化を進められてきました。

そして、1990年代の後半に食料自給を達成します。これは、膨大な人口を抱える中国にとって長年の悲願でもありました。

ただし、この時点での農業の体制は、環境へ大きな負荷をかけていたという側面もあります。

中国の単位面積あたりの化学肥料と農薬の投入量は、世界最多のレベルだったと言います。

過剰に使用された肥料の中の窒素やリンなどの成分は、周辺の水や土壌へ流出し、深刻な環境汚染を引き起こしました。

また、2000年代以降、国内外で中国産の農産物や食品による深刻な公害事件が発生したこともあります。

そういった背景もあり、中国国内では都市部を中心に農業や食品安全問題への関心は急速に高まっていき、有機農業が発展していったのです。

そして、2020年の統計では、中国の有機農業取組面積は、2,435千haを記録しています。

また、中国では従来より「三農問題」という、農村、農民、農業の3つの要素に対する問題が課題として挙げられていました。

有機農業の発展は、農民所得の向上や農村の維持を解決する役割も持っているのです。

有機農業の発展が中国国内にもたらした効果

中国国内の有機農業の発展は、中国国内に次のような効果をもたらしたと考えられています。

市民の安全な生活

現代の生活では、農薬などの化学物質が身の回りの食品や日用品に潜んでいます。

こうした物質は市民の健康に様々なリスクをもたらす可能性があり、残留農薬による健康被害の問題が多発していました。

有機農業による商品や化粧品、繊維製品によって、化学物質のリスクは最小限に抑えられます。

人々の生活水準が向上し、環境意識の高まりによってより多くの消費者に選ばれるようになりました。

生態系の安全の確保

有機農業では、農業が引き起こす汚染を減らし、農地の生物の多様性を守る効果もありました。

農薬や化学肥料の過剰な使用によって、生態系のバランスを壊してしまう問題があります。

家畜の排泄物や、作物の藁、有機廃棄物などを有効活用することで、農薬の使用を大幅に削減し、生態環境の保護につなげることができたのです。

農業生産方式の転換

中国の有機農業は、技術や資金、販売、管理などを統合して、新しい形の労働集約型産業を作り出しています。

これによって、農業生産の組織化が大きく向上したと言われています。

企業が農家と協力して栽培を行い多くの農家が参加している地域もあり、農家の収入の大幅な向上を実現しています。

農作物の市場競争力の向上

中国の有機農業は農作物の品質と市場競争力を高め、地域経済に大きく貢献しています。

中国国内での有機農業は多様な形で発展していて、それぞれの地域が独自の特徴を持っているという側面があり、品質が高く安全で健康的な食品は、国内外の市場で大きな成功を納めているケースがあります。

例として、山東省の有機野菜や有機落花生、江西省の有機茶や有機茶油、寧夏の米、雲南のプーアル茶やインゲン豆、内モンゴルの雑穀などがあります。

茶などの有機食品は、輸出市場もEUや日本から中東、アフリカなどへと拡大していて、持続可能な方法で生産される食品が、世界中で高く評価されています。

農村環境に優しい農業生産の実現

有機農業は、自然環境を大切にしながら、地域社会の持続可能な発展をサポートしています。

家畜の排泄物を使用して土壌を豊かにして化学物質への依存を減らすことで、農村の景観をより良くし、生活の質を向上させています。

有機茶の生産に力を入れている村では、メタンガスの貯蔵施設を建設し、農業生産の無害化や家庭経済の効率化、住居の快適化が進められることで、景観が美しい環境に発展しているようです。

中国で普及している有機認証「緑色食品」

中国で最も歴史が古く、国民に広く認知されている有機認証制度として「緑色食品」という認証があります。

緑色食品の誕生には、生産者がわも消費者の安全意識の高まりに対応するため、安全を強調した食品を生産するようになってきていた背景があります。

それを実現するためのブランド農産物として、1992年に緑色食品の制度が導入されました。

農業所得の向上、消費者の権限を守り、農業環境の改善に寄与することが、緑色食品の認証制度の目的です。

国際的な有機認証の基準である「コーデック基準」を採用していて、中国農業部にある「中国緑色食品発展センター」によって認証されています。

緑色食品は、A級とAA級の2つの分類があります。

A級は農薬や化学肥料の使用が制限されて生産された食品を示し、AA級は農薬や化学肥料を一切使用しないで生産された食品を示します。

農地や空気、水の検査から始まり、生産における農薬の種類や使用回数なども厳しく管理されているようです。

中国政府による有機農業への支援

中国は、国として次のような有機農業の支援を行っていきました。

認証制度の法整備

国際基準と同等の食品認証に関する法制度の整備が進められました。

2000年代の前半に中国で食品安全問題が多発した背景がありこの法整備が進み、有機農業の認証に関する法律である「有機産品認証管理弁法」や「中華人民共和国国家標准」が定められました。

有機農業が、中国にとって輸出産業として始まった背景もあり、早い段階で認証制度の国際基準との統一が進められたようです。

農業支援政策

中国中央政府の環境保護部と農業部は、それぞれが管轄する食品認証の普及を担当し、科学技術部は有機農業のモデルプロジェクト事業を設立する形で有機農業を促進しています。

実際に有機農業の支援事業を実施しているのは地方政府であり、支援の方法のほとんどは直接補助金であり、他に資金調達の支援、技術面での支援を行っています。

1990年代後半から始まった農業の産業化を推進する政策も、有機農業の発展に大きく貢献したようです。

農地制度の規制緩和

農地制度の規制緩和も進められました。農地を集積して大規模経営を行う地域も増加していています。

中国では農村の土地は集団所有とされていて、各農家は農地使用権裏飲みを分配されています。

小規模経営が主体となっているアジア諸国では、有機農業では農薬の飛散など防ぐためにまとまった面積の農地の取得が望ましいという特徴があります。

同じく小規模な家族経営が主体となっている中国では、独特の土地制度と規制緩和は、農地の集積において強みとなっています。

日本でも有機農業の普及が進められています

日本国内でも有機農業の取り組みが進んでいます。

持続可能な食料システムの取り組みとして、令和3年に農林水産省が「みどりの食料システム戦略」を策定しました。

「みどりの食料システム戦略」における目標の中には、次のようなものがあります。

  • 2040年までに、次世代の有機農業技術を確立する
  • 2050年までに有機農業の取組面積の割合を25%(100万ha)に拡大する 
  • 2050年までに低リスク農薬への転換、総合的な病害虫管理体系の確立・普及を行い、化学農薬の使用量を50%減らす

そして、2010年から2020年までの10年間で、有機農業の耕地面積は次のように広がっています。

  • 有機農業の取組面積:16,700ha→25,200ha(51%増加)
  • 有機JAS取得農地面積:9,400ha→14,100ha(50%増加)

有機農業が日本でも徐々に広がっていることが分かりますね。

これは、生産者による思いの強さもあります。

2021年度に行われた意識・意向調査によると、生産者が有機農業に取り組む理由として「よりよい農産物を提供したい」という意見が約7割を占めていました。

消費者が「いい農産物を食べたい」と思うのと同じように、生産者の方々も「いい農産物を食べてほしい」という思いを持っていることが分かりますね。

らる畑では、有機野菜やオーガニック食品をたくさん取り扱っています。

品物ひとつひとつの中に生産者の思いやストーリーが詰まっていますので、ぜひ手に取ってお楽しみください。

<参考>