こんにちは!オーガニック・自然食品のお店「らる畑」のブログ担当、松原です。
らる畑では、毎週金曜日に動物性食品・砂糖不使用のヴィーガン向けのお弁当をつくっているということもあり、ヴィーガンやベジタリアンの方が多くいらっしゃいます。
そこで今回のテーマは「ヴィーガン」。ヴィーガンというライフスタイル(菜食生活)、ベジタリアンとの違いについて勉強しました。
ヴィーガンとは「動物由来の食べ物と製品を消費しない」ライフスタイルのこと
ヴィーガン(完全採食主義者/純菜食者:vegan)は、肉・魚・卵・乳製品・ハチミツのあらゆる動物由来の製品を口にしないライフスタイルのことです。
「動物を苦しませない」という強い信念があり、毛皮や皮製品、毛皮・皮革・動物実験により開発した化粧品も消費しません。
日本ベジタリアン協会は「ベジタリアンの類別のなかでもビーガン (純菜食者) は、強い信念や努力等が必要であることもあり、評価されるべき素晴らしいライフスタイル」と評しています。
ヴィーガンの人はどんなものを食べる?
主として、野菜・果物・キノコ類・穀類・ナッツ類・海藻類が挙げられます。植物由来であるのなら、お酒も問題なく楽しむことができます。また近年では、大豆などを使った代替食品を好んで食べるヴィーガンの方も増えているようです。
ヴィーガンの主な目的は「動物と環境を守る」こと
なぜ、ヴィーガンという生き方を選ぶのでしょうか? ヴィーガンになったきっかけは人によって様々ですが、やはり一番の目的は「動物の命と環境を守る」ことにあるといえるでしょう。
“動物の命をいただかないこと”が、どうして環境を守ることにつながるのか。それは、畜産や漁業が、資源エネルギーを浪費し、知らず知らずのうちに環境にネガティブなインパクトを与えているからです。
たとえば、2022年、カリフォルニア大学バークレー校のEisen教授とインポッシブルフーズのBrown社長アニマルライツセンターの報告によると、
段階的に畜産活動を停止することで、地球の温暖化効果は約30年間安定化し、世界の温室効果ガスの排出量を68%削減することと同義である、という論文を発表しました(参考:アニマルライツセンター)
ヴィーガンの歴史
「ヴィーガン」という言葉は、比較的最近うまれたイメージがありますが、実は半世紀以上前から存在しています。
ルーツは1944年のイギリス。『動物の体・卵・そして新たに乳も食さない協会』(ヴィーガン協会の全身組織です)の会報創刊号にて発表されたのがVeganという言葉でした。
由来は「Vegetarian」の頭3文字と尻2文字。従来のベジタリアン思想の“終わりとはじまり”を意図した、といわれています。
しかしこれはあくまでも西洋史におけるヴィーガンの歴史です。
もっと広い範囲でみてみると、ルーツを古代にまで遡ることも可能です。インドやギリシャでは、宗教・哲学思想の実践として、動物性食品を口にしない純粋菜食主義者も多くいたようです。
ヴィーガンを選択する理由
ヴィーガンというライフスタイルを選ぶきっかけは人によって様々ですが、代表的な理由をピックアップしてみました。
①健康に強い関心をもった
大きな病気をきっかけに食べ物に関心を持った、加工肉や添加物の実態を知って食べ物の選び方を意識するようになった、など……。「健康のもとをつくるのは食事」という考え方から、食生活を見直し、菜食中心のヴィーガンを選択するケースも増えています。
②環境保護の観点
畜産業は、生産・輸送における大量の二酸化炭素・メタンガスの排出、放牧のための伐採による森林破壊など環境に大きな影響を与えているため、環境保護の観点から肉食を減らすという考え方があります。
③世界的な食糧問題の解決のため
肉の生産には大量の穀物や豆、水を消費し、広大な土地も必要とします。この畜産に使われる穀物や資源、土地を世界で飢餓に苦しむ人たちに手渡すことで食糧問題の解決につながります。
④倫理的観点
畜産に利用される動物たちの苦しみを知り、食肉の在り方に疑問を抱いてヴィーガンを選択するという方も増えています。アニマルウェルフェア(動物福祉)を広め、大量消費に歯止めをかけるという強い意志を持った啓蒙活動も広がっています。
ベジタリアンとヴィーガンの違い
ヴィーガンは「ベジタリアン」の一種として位置づけられます。ベジタリアン (菜食主義者:Vegetarian) とは、肉・魚介類をはじめとする、動物性食品を消費しない人たちを指します。中でもヴィーガンは最もストイックな「完全菜食主義」を指しますが、日本では大きなくくりで「ベジタリアン」=「ヴィーガン」という認識が広まっている傾向があります。
ベジタリアンの歴史
「ベジタリアン」という言葉や考え方は、19世紀のイギリスにルーツを見出せます。1847年に発足した「英国ベジタリアン協会」が発祥といわれ、語源はラテン語の「vegetus」 。「健全な、新鮮な、元気のある」という意味が由来です。
もともとはキリスト教の運動の一種であり、植物性食品の食生活を推奨したマンチェスターの聖書教会の活動が、近代におけるベジタリアン運動の端緒だったといわれています。
ただし、これはあくまでベジタリアンという言葉の発祥に関する歴史的なお話です。ベジタリアンの“生き方”それ自体は、古代インドやギリシャにも見出せますし、もっといえば、日本の精進料理も、一種のベジタリアンスタイルであると捉えることも可能です。
ベジタリアンの種類からみたヴィーガンの位置
世界的に見るとベジタリアンにも多様な分類が存在します。基本的には、選びとる食べ物が何であるかという観点から類型化されます。
①ヴィーガン
動物由来の食品や製品を一切消費しない生活を送る人たちのことを指します。日本語では完全菜食主義者とも呼ばれています。
②ピュア・ベジタリアン
インドでは乳製品を食べないスタイルのことを指します。ただし西洋ではヴィーガンの同義として認識されているようです。
③オリエンタル・ベジタリアン
動物性食品のみならず、ニンニク・ニラ・らっきょう・ネギ・タマネギを消費しないスタイルを指します。これらは五葷(ごくん)と呼ばれ、その臭いから、修行の妨げになるとして厳格な仏教信者から忌避されています。
④ラクト・ベジタリアン(乳菜食主義者)
肉や魚は食べませんが、乳製品は食べる菜食主義者です。日本語では「乳菜食」とも呼ばれます。
⑤オボ・ベジタリアン(卵菜食主義者)
肉や魚は食べませんが、卵は食べる菜食主義者です。
⑥ラクト・オボ・ベジタリアン(乳菜食主義者)
肉や魚は食べませんが、乳製品と卵は食べる菜食主義者を指します。
⑦ペスコ ベジタリアン
肉類は食べませんが、魚、卵、乳も食するスタイルです。
⑧セミ・ベジタリアン(フレキシタリアン)
植物性食品をベースに食べますが、場合によっては肉類も食べるなど柔軟性のある食生活を送る人です。
日本のヴィーガン人口
Ethicalize株式会社によれば、2023年の調査を通して、
- 20~69歳の男女2,755人のうちヴィーガンは1.4%
という報告をしています。
またVgewelが20代以上の男女2,418人に対して自身が取り組んでいる食生活を尋ねたところ、ベジタリアンもしくはヴィーガンは全体の5.9%だったことがわかりました。
世界のヴィーガン人口
ヴィーガンメディアや政府報告をまとめると、世界のヴィーガン人口は推定7800万人ほどで、総人口の1%に達しようとしているようです。
割合でみると少ない印象を持つかもしれませんが、ドイツでは10人に1人の割合でベジタリアンやヴィーガンだといわれており、着実にその生き方を積極的に選択する人が増えているといわれています。
なぜヴィーガンが注目されているのか?世界的に人口が増え始めている理由
ヴィーガンやベジタリアンの人口比率の増加にくわえ、特筆すべきは人口増加の伸びです。
観光庁の調査によれば、2018年の時点で、主要100ヶ国・地域におけるベジタリアン人口は約6.3億人に達しているといわれています。また人口増加の傾向も著しく、欧米諸国を中心に毎年約1%近くの割合で増加しているそうです。
その理由として、大和総研の調査員は、
- 世界的な健康志向の高まり
- 食をめぐる情報へのアクセス容易化
- 動物への残酷な行為に対する世界的な動き
- 環境保護意識の向上
を挙げています。
総じて、「価値観の変化」がキーポイントとなるのではないでしょうか。調査員は次のように考察しています。
「健康、動物愛護、環境への意識の向上といった普遍性を有する価値観の変化はある程度、不可逆的なものである。こうした価値観の変化に、FoodTech等の技術的な進歩が加わって、人々の行動が変化しているのであるとすれば、菜食主義の広まりは長期的なトレンドになり得るのではなかろうか」
引用:『なぜ今、ヴィーガン(ベジタリアン)なのか~重要な示唆は価値観の変化による行動変化~』(大和総研)
日本は古くから菜食中心の食文化
ヴィーガンやベジタリアンという言葉は、欧米から入って来た言葉ですが、日本の食の歴史を振り返ってみると、古くから菜食中心+魚介の暮らしが根付いていたことがわかります。。
明治維新以降に食の欧米化が進み、肉や乳製品の摂取量が増えていきますが、ひと昔前は「一汁一菜」が庶民にとっては当たり前で、穀物と野菜を中心とした食文化でした。
禅宗の修行僧が食している「精進料理」は仏教における教えに基づき、生き物を殺すこと(殺生)を避けるために生まれました。
四季の変化が多く旬の野菜が豊富な日本では、菜食中心の食生活は身近で取り組みやすい食文化でもあります。
ヴィーガンレストランを探すときにおすすめのサイト
最後に、出先でヴィーガンレストランを探すときに便利なサイトを紹介します。それが「Vegewel」です。今回の記事でも参考にした当サイトですが、このサイトは、全国のベジタリアン/ヴィーガンレストランをエリアごとにまとめているので、探しやすくて便利です。
また、北海道でヴィーガンレストランを探す際は、「Welcome HOKKAIDO」も選択肢に入ります。海外旅行者を意識したデザインにもなっていますので、留学生や海外からきたご友人におすすめしやすいサイトです。
らる畑のお弁当「らるごはん」
「らるごはん」は、毎週金曜日にマクロビオティック式食生活アドバイザーのシェフが作る動物性食品・砂糖不使用のお弁当。
他の曜日に使う食材も平飼い卵や放牧豚などアニマルウェルフェア(動物福祉)に基づいた飼育方法で育った、らる畑の食材を使っています。
動物性の食べ物を安く、たくさん頂くという食生活は、生物や環境にとって多くの負担と引き換えである現状があります。
何気なく食べている動物性食品がどこでどのように作られたものなのか。
ベジタリアンのライフスタイルは、何を選択しどう食べるのかを考える切っ掛けになるかもしれません。
参考資料
【サイト】
Vegewel
Ethicalize
日本ベジタリアン協会
アニマルライツセンター
【文献】
『日 本 人 菜 食 主 義 者 に お け る 生 活 習 慣 病 予 防 の 観 点 か ら 見 た 栄 養 状 態の 特 徴 に 関 す る 研 究』(仲本 桂子/女子栄養大学)
『なぜ今、ヴィーガン(ベジタリアン)なのか~重要な示唆は価値観の変化による行動変化~』(大和総研)