毎日の食事に欠かせない調味料。
たくさんあるので、何を原料にどんな風に作られているのか、知らないことも多いのではないかと思います。
原料や製法の違いによって、味や価格に大きな影響があり、一般的には安定供給のために大量生産されるものが多く市販されています。
そんな中でも、原料へのこだわりや伝統的で手間のかかる製法を貫くメーカーさんが日本全国、世界各地にいらっしゃいます。
この記事では、らる畑で取り扱っているこだわりのメーカーさんから、2017年に訪問した「ヤマヒサ醤油」さんについてご紹介していきたいと思います。
小豆島で80年以上続くヤマヒサ醤油のこだわり
ヤマヒサ醤油は、昭和6年から香川県小豆島で醤油造りを続けている醸造所です。
醤油造りが家業で代々受け継がれていて、今の社長で4代目になります。
ヤマヒサの醤油は、スーパーなどでよく見るような大量生産された醤油と比べて原料と製法に大きな違いがあります。
原料へのこだわり
まずヤマヒサさんの醤油造りの特色として、原料への強いこだわりが挙げられます。
ヤマヒサ醤油の原料は国内産の大豆と小麦です。醤油の種類によっては、農薬も化学肥料も一切使わないものや有機JAS認定の大豆や小麦を厳選して使用しています。
原料へのこだわりは、「生産者である前に消費者である」という、1932年の創業時から大切にしている考えが基になっているのだといいます。自分にも家族にも安心して食べてもらえるものづくりへの想いが込められているのですね。
実際に、ヤマヒサ醤油は、日本の中でも先駆けて有機原料を使っての醤油造りを開始した存在でもあるのです。
具体的には、醤油造りに使っている原料は以下の生産地のものが使用されています。
ヤマヒサ醤油が使用している原料の生産地
- 大豆:福岡、石川、岩手
- 小麦:香川、北海道、石川、岩手、秋田
- 塩 :オーストラリア(天日塩)
杉樽を使った伝統的な醤油造り
そして、ヤマヒサ醤油は、厳選した原料をただ使うだけでなく、伝統的な方法の醤油造りを一貫して続けているという点も大きな特色です。
ヤマヒサの醤油の味は、受け継がれてきた醸造蔵と杉樽でできています。
登録有形文化財にも指定されている醸造蔵の中で、170本ほどの杉樽を使って仕込みが行われていて、これは「木桶仕込み」と呼ばれる伝統的な製法です。
杉でできた樽を何度も繰り返して使うと、木に微生物が住み着いて安定した醤油ができるようになるのだそう。
醤油の醸造に必要な微生物は樽だけでなく蔵全体にいて、それらの菌が働くことでヤマヒサ独自の、重厚で味わい深い風味の醤油ができるのだといいます。
そして、この伝統的なヤマヒサの醤油造りは、熟練の職人によって①製麹(せいさく)②搾り③濾過、それぞれの工程が管理されています。
ヤマヒサ醤油の大量生産で造られる醤油との違い
厳選した原料を使い伝統的な製法で造られているヤマヒサ醤油ですが、大量生産される醤油と比べて実際にどう違うのでしょうか?具体的な違いについてもご紹介します。
まず、大量生産される他社の醤油は、タンクに添加物を投入して強制発酵させて作られています。効率性や生産性が重視されるので、約4ヶ月という短い醸造期間で造られます。
大量生産される醤油は化学合成添加物を投入して醸造するので均一な味に仕上がりますが、その分深みやコクの風味は生まれません。
一方でヤマヒサ醤油は、国産の丸大豆と小麦・天日塩を原料に、杉の大樽仕込みの天然醸造法で造られていて、醸造期間は「こいくち」で1年半以上、「うすくち」で1年以上の期間を使いじっくりと造られます。
そして、「より安全、より自然を求めて」にこだわるヤマヒサの醤油は、添加物を一切加えず自然発酵させてじっくりと造られるので、旨味とコクのある味に仕上がるのです。
使用されている「大豆」にも違いがあります。
醤油造りに使用される大豆には「丸大豆」と「脱脂大豆」があります。脱脂大豆とは、大豆から油を搾った後のタンパク質を醤油が作れるように加工したもの。大量生産されている醤油のほとんどには脱脂大豆が使用されています。
また、外国産原料の場合は遺伝子組み換え大豆を使用している可能性も高くなります。
一方でヤマヒサ醤油は全て丸大豆を使用しているので、大豆の素材の味がしっかり醤油に活かされているのです。
このように醸造方法や原料の違いが、味や価格に大きく反映されています。
短時間で脱脂大豆を使って作られた醤油は、風味を良くするために合成添加物を使用して味を調整することが多くなりますが、「より安全、より自然を求めて」にこだわるヤマヒサの醤油は、合成添加物を一切加えず自然発酵させてじっくりと造られるので、旨味とコクのある味に仕上がるのです。
醤油を選ぶ際は、原材料名の欄を見て「丸大豆」であるかを確認し、スラッシュマーク(/)より右にある物は合成添加物を表しますので、表示をよくご覧になってみてください。
らる畑で取り扱っているヤマヒサの醤油
らる畑では、ヤマヒサ醤油の定番である「頑固なこだわり醤油」を取り扱っています。
杉樽仕込・頑固なこだわり醤油こいくち
国内産の農薬不使用で栽培された大豆と小麦を主原料に、杉樽で昔ながらの醸造方法を用いて作られたモロミを使用した天然醸造醤油です。
かけ醤油や煮物をはじめ、さまざまなお料理にお使いいただけます。
杉樽仕込・頑固なこだわり醤油うすくち
頑固なこだわり醤油の「うすくち」仕様です。
お吸い物や、色合いを大切にしたいお料理の味付けにおすすめです。
杉樽仕込・頑固なこだわり醤油 本生
頑固なこだわり醤油の、酵母が生きた「本生」仕様の醤油。
杉の木の大樽で二夏じっくり熟成させて造られています。
かけ醤油、煮炊き物など料理全般にお使いいただけます。
2017年11号らる通信より
行ってきました初めての小豆島!生憎の雨と短時間滞在でしたが、ぷくぷくと発酵の音が聞こえてきそうな杉樽木桶の醸造蔵に入れていただいて、ヤマヒサさんの蔵付き酵母ともろみの香りをたくさん吸い込んできました!
海運貿易の要所として栄え、塩作り、醤油醸造の古い歴史のある小豆島。
社長の植松勝久さんは4代目。元々は農家だったことが、国産、農薬・化学肥料不使用の原料にこだわる切っ掛けになっているそうです。
ヤマヒサさんに170本あるという杉樽は今では1件しか作れる所がないという貴重な物。昔は酒で30年、醤油・味噌で200年、その後漬物に回るというリサイクルが成り立っていたと言います。
この杉樽に蒸した大豆と煎った小麦で作った麹と天日製塩の塩水を合わせて1年以上熟成。杉樽に住み着く酵母菌が発酵をすすめ、独自の香り、甘み、コクなどを醸し出し、最後の火入れの加減でヤマヒサ醤油の特徴を決定づけるそうです。
日本の寒暖差のある気候風土でゆっくりと発酵熟成された醤油は、それぞれの地域で唯一無二の味と香りを持っています。香り付けに掛け醤油に、長期本醸造醤油の個性と美味しさをぜひ食卓で味わってみて下さい!
らる畑では全国各地から厳選した調味料を取り扱っています
今回は、ヤマヒサ醤油についてご紹介しました。
丁寧に時間を掛けて作られた調味料は、大量生産されたものと比べてお値段は高くなりますが、実は使用量がわずかでも、しっかりと素材の味を引き出すことができます。
オーガニック野菜やサスティナブルな生活に興味が出てきたら、まずは基本調味料を見直してみるのもおススメです。
たくさんの種類の調味料を用意しなくても、シンプルに野菜や素材のおいしさを感じていただけるようにだんだんと舌が慣れてきます。
発酵や醸造、伝統的製法が生み出す本物の調味料のおいしさを知り、ぜひ製造を続けているメーカーさんを応援いただければと思います。
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